BIM活用で「標準化」の先へ――西松建設がWOGOと挑む「BIMモデル最適化ツール」開発
BIM・建設DX
Posted on・2026/05/29
Updated on・2026/05/29
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建設業界では、労働時間規制や労働人口の減少を背景に、業務効率化・省人化・標準化の重要性が高まっています。なかでもBIMは、設計・施工・維持管理までをつなぐ基盤として期待される一方で、実務で活用し切るためには、データの扱いや部門横断での連携に多くの課題が残されています。
西松建設株式会社では、「魅力あるゼネコンNo.1」の実現に向けた取り組みの一環として、全社的な効率化を推進しています。その実現に向けて、デジタル技術やAI技術の活用は不可欠であり、デジタルコンストラクションセンターや設計BIM課にとって、業務効率化は重要なミッションの一つに位置づけられています。
今回WOGOは、西松建設と共同で、解析シミュレーションの用途に合わせてBIMモデルの形状データを最適化する「BIMモデル最適化ツール」を開発しました。本記事では、開発の背景、WOGOを選定した理由、そして今後の展望についてご紹介します。
1. 抱えていた課題 〜BIMを”実務で活用し切る”ために
西松建設では、設計・生産設計・施工といった各部門でBIM活用を進めてきました。一方で、それぞれの部門が活用目的に応じて標準化を進めるなか、部門を横断した連携や、会社全体としてBIMを活用し切ることには課題がありました。
「労働時間の規制や労働人口の減少がさけばれる中で、無駄な作業をなくすことや、自動化すること、属人的な作業を標準化することが課題であると感じています。」
特に課題となっていたのが、解析シミュレーションにおけるBIMモデルの活用です。日影計算では、Revitモデルから計算用モデルを生成する際にフリーズやモデル欠落が発生することがありました。気流解析でも、IFC変換や解析ソフトへの取り込みの過程でモデル欠落や調整作業が発生し、解析時間が長くなることが課題となっていました。
その結果、日影計算ではRevit上で最外形モデルを手入力し、気流解析では解析ソフト上で簡易モデルを手入力するなど、BIMモデルを十分に活用できない場面もありました。
BIMを活用しているにもかかわらず、解析のために別途モデルを作り直す必要がある。その状況は、BIM活用の本来の価値を十分に引き出せていない状態でもありました。
2. WOGOを選んだ理由 〜「3D×AI」の提案と、自由な発想への期待
西松建設がWOGOとの協業を決めた背景には、WOGOが持つ独自の3D技術やAI技術、そして従来の建設業界の発想にとらわれない提案力がありました。
特に、「3D×AIを活用した自動設計」という提案は、西松建設にとって大きなインパクトがあったといいます。
「『3D×AIを活用した自動設計』のご提案にインパクトを受けたことを覚えています。会話を重ねる中で、普段は我々では思いつかない発想や、独自の3D技術に魅力を感じて、開発の依頼を決断いたしました。」
建設業界の実務課題に対して、業界内の常識だけで解を探すのではなく、3D・AI・ソフトウェア開発の視点から新しいアプローチを提示する。そうしたWOGOならではの技術力と発想力が、今回のプロジェクトを進める決め手となりました。
3. 開発したソリューション 〜BIMモデルを解析用途に合わせて自動最適化
今回開発したのは、Revitのアドインとして動作する「BIMモデル最適化ツール」です。
このツールは、複雑なBIMデータを、日影計算や気流解析などの解析用途に合わせて自動で軽量化・簡素化します。詳細度の高いRevitモデルから、解析に必要な形状情報を抽出・整理し、計算・解析用モデルへと変換することで、解析ソフトとの連携時に発生していたエラーや手作業を減らすことを目指しています。
これにより、解析シミュレーションの実効性を高めるとともに、実施設計段階や大規模プロジェクトでのBIM活用拡大につなげることが期待されています。開発後のアップデートでは、より複雑な建物形状への対応も進み、最適化時間も従来の15分から3分へ短縮されました。
4. プロジェクト推進におけるWOGOへの評価
開発を進める中で、西松建設が評価したのは、WOGOの技術力だけではありません。定期的な進捗共有や、課題解決に向けた丁寧なディスカッションも、プロジェクトを前進させる重要な要素となりました。
「開発中は定期的に進捗や課題をご共有いただき、課題の解決方法や開発の可能性について丁寧にディスカッションしながら進められたことが良かった点です。」
一方で、プロジェクト開始当初、WOGOはBIMソフトに関する経験がまだ十分とは言えない部分もありました。しかし、そのことが必ずしもマイナスに働いたわけではありません。
「プロジェクト開始時点では、WOGO様がBIMソフトを取り扱った経験が浅かった点が課題でしたが、だからこその自由な着眼点や発想がいい方向にも働いたと思います。今後、BIMソフトに関する理解や経験を重ねていって頂けたらと思います。」
西松建設の実務知見と、WOGOの3D・AI技術を掛け合わせることで、双方の強みを活かした開発が進められました。
5. 現在感じている効果と、今後期待されるインパクト
本ツールにより、これまで手作業で行っていた解析用モデルの調整や再作成を自動化し、BIMモデルをより実務に近い形で活用しやすくなることが期待されています。
特に、実施設計段階や大規模プロジェクトでは、BIMモデルの情報量が多くなり、解析ソフトとの連携負荷も高まります。こうした場面で、解析用途に応じてモデルを最適化できることは、BIM活用の幅を広げるうえで大きな意味を持ちます。
また、今回の開発は日影計算にとどまらず、気流解析など他のシミュレーション領域への展開も視野に入れています。解析ごとに必要な情報は異なるため、用途に応じてBIMデータを変換・整理する技術は、今後さらに重要性を増していくと考えられます。
BIMを「作る」だけでなく、実務の中で「使い切る」。そのための基盤として、BIMモデル最適化ツールは今後さらに重要な役割を担っていくことが期待されます。
6. 今後の展望 〜標準化に加え、”最適化”でBIM活用を広げる
西松建設では、今後のBIM活用に向けて、上流工程から「正しいモデル」をつくり、設計・生産設計・施工でそのモデルを循環させることを目指しています。BIMを基盤に、データ・技術・知識を循環させることで、新たな価値を創出していく方針です。
そのためには、部門横断で使えるモデルを整備する「標準化」に加え、解析・シミュレーション・施工・維持管理など、それぞれの用途に応じてデータを使いやすい形に変換する「最適化」が欠かせません。
WOGOは、今回の西松建設との取り組みで得た知見を活かし、BIMを含めた3Dデータ最適化技術のさらなる発展に取り組んでいきます。複数の業務ツール間のデータ変換をさらに自動化することで、設計業務の一気通貫の効率化に貢献してまいります。
西松建設とWOGOの共創は、BIM活用を”標準化の先”へ進める挑戦です。実践的なBIM活用に向けて、両社はこれからも、建設業界におけるデータ活用と生産性向上の可能性を広げていきます。





