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AIはCADモデルを作れるか?|Text to CADと図面の3D化を検証してわかった、できること・できないこと

Updated on・2026/09/23

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AIに言葉で指示すると3Dモデルができる。Text to CAD(テキスト・トゥ・キャド)と呼ばれるこの技術はここ数年で身近になり、海外では文章1つから3Dモデルを作るサービスや、AIエージェントにCAD生成の手順を教える公開プロジェクトが登場しています。では、AIは製造業で使えるCADモデルを本当に作れるのでしょうか。

現場が知りたいのは「それで、どれくらい正しいのか」でしょう。弊社は早い時期から、公開されているText to CADの仕組みで、言葉で指示して部品を作らせたり、2D図面を読ませて3Dモデルを起こしたりする検証を重ねてきました。その検証をもとに、今のAIでできること・できないことと、うまく使うために必要なことを整理します。

結論を先に言うと、寸法が揃った単純な部品はすでに正しく作れます。複雑な図面ではまだ正確さに欠け、指示どおりに作れても製造できるとは限りません。ただしそれはAIの能力の限界というより、人が持っているノウハウをどう教え、どこで人が判断するかが整っていないことによります。そして、厳密さと再現性が求められる部分は、言葉のドキュメントだけでは足りません。

この記事の要点

  • 寸法がすべて書かれた単純な部品は、AIは指示どおりに作れます。図面からの3D起こしも、読み取りと検証の手順を整えれば、図面の指示と一致する形になります
  • 入力の一例として2D図面を読ませると、複雑な図面では図面に書かれていないこと(寸法のない形状、注記がどこを指すか、図面自体の矛盾)が残り、そこはAIだけでは決まりません
  • 「正しい」には2つの方向があります。①指示どおりかと、②製造でき、要件を満たすかです。要件だけを伝えて板金を作らせると、①は満たすのに、曲げの工具が入らない形ができました
  • うまく使う条件は、人が自分の業務を言語化することです。同じAIでも、ノウハウを伝える前と後で結果は大きく変わります。厳密さと再現性が要る部分(3D形状の解析・検図)は、言葉ではなく、機械が毎回同じ定義で測る仕組みが要ります

Text to CADとは何ですか?AIは形を「描いて」いるのですか?

Text to CADは、文章から3D CADモデルを生成する技術です。海外ではZooのように「1つのプロンプトから編集可能な3Dモデルを作る」ことを掲げた商用サービスがあり、オープンソースではearthtojake/text-to-cadのように、AIエージェントにCAD生成の手順を教える「スキル集」も公開されています。大手CADベンダーの生成AI機能も同じ流れにあり、CAD別AI機能比較で整理しています。

名前は「文章から」ですが、中で起きていることは少し違います。Text to CADの中心にいるのは、ChatGPTのような「言葉を扱うAI」です。このAIは、形を直接描くことはできません。文章でも、画像でも、図面でも、受け取った入力をまず文字の仕様に書き直し、次にその仕様から形を作る手順を書きます。実際に形を作るのは、CADの計算エンジンです。

Text to CADの処理の流れを示した図。入力を文字の仕様に直し、手順を書き、CADエンジンが形を作る
図1. Text to CADの実際の流れ。AIが扱うのは文字と手順(コード)で、形を作るのはCADの計算エンジンです

この意味で、Text to CADは「文章で指示する機能」というより、AIがCADを扱う技術そのものです。入力が文章か図面かは入り口の違いにすぎず、中では同じことが起きています。

AIはCADモデルを、どれくらい正しく作れるのですか?

先に、「正しい」には2つの方向があることを押さえておきます。

①指示どおりか。言葉や図面で伝えた仕様をAIが正しく読み取り、そのとおりの形になっているか。

②製造でき、要件を満たすか。指示どおりの形が、加工機に乗るか、曲げられるか、干渉しないか、自社の設計基準を満たすか。図面どおりに作ったのに製造できないなら、それは図面自体の問題で、これも見つける必要があります。

入力は文章・画像・図面などいろいろあります。ここでは、寸法を言葉で指定する方法と、2D図面を読ませる方法を例に、弊社の検証結果を並べます。最初の3つは①を、最後の1つは②を見ています。

寸法がすべて言葉で指定された部品:①正しく作れる

「100×60×20mmのブロックに貫通穴を4つ、上面の外周だけに面取り」のように条件がすべて明示されていれば、推理は発生しません。寸法・穴の位置・面取りの範囲まで、指示どおりの形になりました。

言葉で寸法を指定して生成したブロック部品の3Dモデル
図2. 寸法をすべて言葉で指定した部品。推理が発生しないため、指示どおりの形になります

簡単な図面:①図面どおりに作れる

手書き風の2面図の画像から起こした例です。図面はCAD演習場の練習用図面「CAD演習用図面 f4-1」を使いました。全長・段差・穴の位置・フィレットまで、図面どおりのモデルができました。

簡単な2面図から起こしたレバー部品の3Dモデル
図3. 簡単な2面図(出典: CAD演習場「CAD演習用図面 f4-1」)から起こした3Dモデル

複雑な図面:①そのままでは、合っていない箇所が残る

公開データセットの図面1枚を、同じ流れに通しました。最初に生成したモデルは一見それらしい形でしたが、3Dを元の図面に重ねて誤っている箇所を可視化すると、合っていない箇所がはっきり残りました。

複雑な図面から最初に生成した3Dモデルと、図面に重ねて誤りを可視化した図
図4. 複雑な図面の最初の結果。左が元図面、中央が最初に生成した3Dモデル、右は3Dを図面に重ねて誤っている箇所(橙)を可視化したもの(図面: CADGenBench、ODC-BY)

寸法が書かれた指示の大半は合っていましたが、寸法のない形状や図面自体の矛盾など、図面に書かれていないことに関わる箇所が合っていませんでした。

ここまでの3つは、①指示どおりかの話です。残った誤りは改善できないのか、という問いは後の章で扱います。最後に、②を見ます。

要件だけを伝えた板金:①は満たすが、②製造できない

最後に、同じAIに要件だけを伝えて板金部品を作らせました。「板厚2mmの鋼板を曲げて作る、断面がコの字のケーブル用ブラケット。底面に取付穴、両側面の下のほうにケーブルタイ用の穴、上端は手を切らないよう内側に折り返す」。加工性については何も言っていません。

要件だけを伝えて生成した板金ブラケット。曲げに接する穴と内向きの折り返しが指摘されている
図5. 要件だけを伝えて生成した板金ブラケット。①寸法・穴・折り返しは要件どおりで、見た目にも問題はない。②側面の穴が曲げに接している。③内向きの折り返しがあるため、コの字の2回目の曲げで上型(曲げの工具)が入らない

できたモデルは、寸法も穴の位置も折り返しも、要件をすべて満たしていました。①は合格です。ところが、この形は板金として作れません。

  • 側面の穴が曲げに接している。曲げ線から穴までには一定の距離が要り、近すぎると曲げるときに穴が歪みます
  • 内向きの折り返しがあると、曲げの工具が入らない。コの字の2回目の曲げでは、上型が両側の折り返しの間を通って底まで届く必要がありますが、この開口と深さでは当たります
  • 曲げRが板厚に対して小さく、折り返しが短い。加工先の材料と金型次第では成立しません

正しくないのは、AIの能力の限界ですか?

そうは考えていません。検証で正しくなかった箇所を分解すると、理由は3種類に分かれます。

1つ目はやり方の問題です。目で読んだ、尺度を決めなかった、注記を正にして形を推測した、完成後の確認が目視だった。これらは賢さの問題ではなく手順の問題で、実際に手順を変えただけで、同じAIが図面と一致するモデルを作りました。

2つ目は図面に書かれていないことを補う判断です。寸法のない形状をどう解釈するか、矛盾する寸法のどちらを取るか。これは読む精度ではなく、その部品が何で、どう加工されるかを知る人の判断です。

3つ目は製造できるかの基準が渡されていないことです。板金の例では、何を守り、迷ったら何を優先するのかの基準が無かったため、寸法の要件だけが守られました。

つまり難しいのはAIではなく、人が持っているノウハウ(手順・判断・基準)が、まだAIに渡せる形になっていないことです。

AIをうまく使うには、何が必要ですか?

一言で言えば、人が自分の業務を言語化することです。

AIは非常に優秀な人材にたとえられます。ただ、どれほど優秀な人でも、CADと図面だけを渡されて「あとはよろしく」では仕事になりません。この部品は何で、どう加工されるのか。図面のどこを正とし、迷ったら何を優先するのか。できた形を、何と照らして確認するのか。人が暗黙に持っているこうした前提を言葉にして渡したとき、AIの結果は変わります。

例:現場のワークフローを、コツとして教える

2Dの発注図から3Dモデルを起こしている現場では、正しく起こせたかを確かめるために、できた3Dをもう一度2D図面に落とし、元の図面と寸法の対応を取る、という手順が回っています。人が経験から身につけたコツです。これをそのままAIに教えました。AIの自己検査は「自分の仕様どおりか」しか見ないので、まさにここが足りていなかったからです。

元図面の寸法と、3Dから再投影した図面の寸法の対応を番号で示した図
図6. 元図面(左)の寸法と、3Dから再投影した図面(右)の寸法の対応。同じ番号が同じ指示です。右の数値は図面から写したものではなく3Dモデルを測って算出したもので、これを元図面の指示値と突き合わせます

図7の左右は同じAI・同じ図面から起こしたもので、違うのは人が伝えたノウハウだけです。最初の結果(左)ではスロットの並びが不揃いで、ラグの肉抜きの形も図面と違っていました。3Dを図面に再投影して寸法と形の対応を取り、ずれた箇所を直す、という手順を教えて回したところ、右のように揃いました。AIの賢さは変わっていません。AIにとっても、ノウハウやコツが決定的に重要だということです。

ノウハウを伝える前と後で生成結果を比べた図。スロットの並びと肉抜きの形が揃っている
図7. 複雑な図面の、ノウハウを伝える前(左)と後(右)。どちらも同じAIモデルで生成しています。上が3Dから再投影した図面、下が3Dモデル。違いは人が伝えたノウハウだけです
元図面から起こした3Dモデルと、そこから再投影した図面を並べた最終結果
図8. 改善後の最終結果。元図面(左)から起こした3Dモデル(中)と、3Dから再投影した図面(右)。右の数値は図面から写したものではなく、モデルを測って算出したものです

加工性の基準も、同じように言葉にする(検図)

①が満たされても②は残ります。曲げ部にRがあるか、穴が端面や曲げ線に近すぎないか、板厚が一定か、工具が届くか。加工先の設備で決まる基準を、できたモデルに対して当てる工程です。板金の例で起きた問題も、基準が言葉になっていれば、少なくとも「要件と基準が食い違っている」と申告させることはできたはずです。板金の確認項目は板金設計チェックリストに、自動化の考え方はAI検図とはにまとめています。

人が毎回フローに入る、という意味ではありません

これらは「人が全件を見る」ことではありません。最初に人がノウハウを言語化することです。読み取りの手順、部品の種類ごとの加工の規則、判定の基準。一度明確にすれば、AIは次からそれを頼りに動き、人は「判断できなかった」と申告された図面だけを見ればよくなります。実際、弊社が手探りで積み上げた読み取りの観点は、後で見た公開プロジェクトの「図面の読み方」の規則とほぼ重なっていました。言語化されたノウハウは共有でき、蓄積できます。

ノウハウを言語化してAIに渡し、判断できなかった箇所だけを人が見るループの図
図9. ノウハウを言語化してAIに渡すループ。人が毎回見るのは、AIが「判断できなかった」と申告した箇所だけです

言葉で教えれば、すべてAIに任せられますか?

前の章の答えは「ノウハウを言葉にして渡せば、AIの結果は変わる」でした。では、加工性の基準も言葉で教えれば、検図までAIに任せられるのでしょうか。ここに、言葉だけでは越えられない線があります。

言葉で渡したノウハウは、AIが解釈して使います。コツや判断の優先順位のように、状況に応じて柔軟に使ってほしいものには、それが向いています。しかし、合否の判定は事情が違います。「この板金は曲げられるか」と一言で頼んでも、AIの解釈と計測方法は一定になりません。曲げ線から穴までの距離を、曲げの接線から測るのか、中心線から測るのか。前述の公開プロジェクトの製造性レビュー機能も「距離を比べる前に、どこから測るかを明示せよ」と注意し、「手順にもとづくレビューであり、製造の認証エンジンではない」と断っています。検査項目も依頼ごとにAIが選ぶため、同じ部品を2回流して同じ検査が走る保証はありません。

生成側の自己検査も同じです。そこで見ているのは①、しかも「AI自身が書いた仕様どおりか」であって、元の指示との一致や、②製造できるかは対象外です。板金の例で、要件を満たしたモデルが工具の入らない形になったのは、このためです。

つまり、方針は言葉で渡せます。しかし合否を言葉で決めてはいけない場所があります。厳密さと再現性が要求される部分、つまり3D形状を毎回同じ定義で測る解析と、加工先ごとの基準を固定したルールとして判定する検図です。ここは言葉のドキュメントではなく、生成とは独立した機械の仕組みとして持ちます。

言葉で渡すもの(方針) 機械に固定するもの
中身 部品の種類、加工の規則、読み取りの手順、判断の優先順位 形状の測り方の定義、判定ルール、加工先ごとの基準
誰が決めるか 人 人が決め、機械が保持する
求めること 状況に応じた判断 同じ入力には常に同じ結果
誰が採点するか 人が最終判断 生成とは別の仕組み
生成側の自己検査と、固定ルールを持つ独立した検図の役割の違いを示した図
図10. 生成側の自己検査は「指示どおりか」を依頼ごとに組み立てて見ます。製造できるか・基準を満たすかは、固定したルールを持つ独立の検図が担います

製造業でAIによるCAD生成を試すなら、どこから始めるべきですか?

  1. 入力を決める。文章で一から説明させるより、既存の2D図面から3Dモデルを起こす業務のように、数値がすでに揃っている入力から始めます
  2. 部品の種類と加工の規則を、人が先に決めて渡す。板金か切削か、繰り返し形状の並び方など、読み取りの前提になる判断です
  3. 読み取った仕様と、仮定・矛盾の一覧を成果物として受け取る。3Dモデルだけを受け取らないようにします
  4. 現場の確認手順をコツとして教える。3Dから図面を再投影して元の図面と比べる工程を入れ、ずれた箇所の一覧を人が見る範囲にします
  5. 生成とは独立した検図を通す。AIが作ったモデルも、人が作ったモデルと同じ基準にかけます
  6. 単純な部品から始め、ノウハウを言語化して蓄積する。人が判断した内容を方針として書き残すと、次からAIがそれを使えます

この順序なら、AIの精度が上がっても下がっても、確認の仕組みは変わりません。AIの性能に依存しない部分を先に作る、という考え方です。設計業務の自動化が今後どう進むかは、生成AIで設計業務はどう変わる?機械設計AIの進化タイムラインで整理しています。

Text to CADに関するよくある質問

文章だけで部品を作らせることはできないのですか?

寸法がすべて言葉で指定できる単純な部品なら可能で、指示どおりの形になります。ただし実務の部品では、形状と要求を漏れなく言葉で書くほうが図面を描くより大変です。既存の2D図面を読ませるのは、その有力な使い方の一つです。

AIはどれくらい正確にCADモデルを作れるのですか?

寸法が揃った入力なら指示どおりに作れます。図面からの場合は手順次第で、目で読ませると主要寸法を誤読し、測って読ませ、図面に重ねて照合すれば一致しました。図面に書かれていないこと(寸法のない形状、注記の係り先、図面の矛盾)は、人の判断が要ります。

AIが作ったモデルは、そのまま製造に流せますか?

そのままでは流せません。指示どおりか(①)と、製造でき設計基準を満たすか(②)を別々に確かめる必要があります。要件だけで作らせた板金は、①を満たしながら曲げの工具が入らない形でした。②は生成とは独立した検図で確かめます。

図面をAIに読ませれば、3D起こしの仕事はなくなりますか?

人の仕事が「起こす」から「判断を言語化する」「申告された箇所を確認する」に移ります。部品の種類や加工の規則、矛盾の扱いといった判断は人に残りますが、一度言語化すればAIは次からそれを使えます。

検図もすべて言葉で教えれば任せられますか?

方針は言葉で渡せますが、合否は言葉で決めない設計にすべきです。「曲げられるか」の一言では解釈も計測方法も一定にならないためで、測り方の定義と判定ルールを固定し、同じ入力に同じ結果を返す仕組みが要ります。

まとめ

AIは、言葉を扱ってCADの操作手順を書くことで、CADモデルを作れます。寸法が揃った単純な部品はすでに正しく作れ、図面からの3D起こしも、測って読む手順と再投影による照合を整えれば、図面の指示と一致する形になります。ただし指示どおりに作れることと、製造できることは別で、要件だけで作らせた板金は曲げの工具が入らない形でした。

複雑な図面で残るのは、図面に書かれていないことを補う判断です。それが何で、どう加工される部品か。矛盾する寸法のどちらを取るか。これはAIの能力の限界ではなく、人のノウハウがまだAIに渡せる形になっていないことによります。同じAIでも、ノウハウを伝える前と後で結果は大きく変わりました。うまく使う条件は、人が自分の業務を言語化することです。一度言語化し、判断できなかった箇所だけを申告させれば、人が毎回全件を見る必要はありません。

ただし、合否を言葉で決めてはいけない場所があります。3D形状を毎回同じ定義で測る解析と、固定したルールで製造できるかを判定する検図です。ここは言葉のドキュメントではなく、生成とは独立した機械の仕組みとして持つ必要があります。

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本記事は、3D・CAD・AI技術を活用し、製造業における設計検証・自動検図・設計/製図自動化のシステム開発に取り組む、東大発スタートアップの株式会社WOGOが執筆しました。

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